五位の修行 第一位 資糧位〔しりょうい〕

i. 自分の向上を資〔たす〕けるあらゆる修行を積み重ねる段階。
ii. 修行は、大分類三、小分類三十の項目があり、それを<三階三十心>という。
iii. 大分類の<三階>とは、<十住><十行><十廻向〔じゅうえこう〕>である。
iv. 小分類の<三十心>とは、<三階>がそれぞれ十にわかれていることをいう。
v. 十住とは、<こころ>が仏道修行にきまって動かぬ十心である。(主に精神的な部分)
1) 発心住〔ほっしんじゅう〕…仏道への純粋な気持ちをおこす。(信心、精進心、念心、恵心、定心、施心、戒心、護心、願心、廻向心。)
(a) 知的探求を本筋とする唯識でも、根底には仏(本当の自分)への<信>がある。
(b) 仏を知り尽くしていたら、仏を求めることはない。また、全く知らなくても、求めることはない。
(c) <信>の心所での「心澄浄」というところで、「忍」は知的な認識、「楽」は情的な思慕、「欲」は意志であった。
2) 治地住〔ぢぢじゅう〕…身・語・意の行いを清浄にする。
3) 修行住〔しゅぎょうじゅう〕…唯識観を深め、六波羅蜜の修行を進める。
4) 生貴住〔しょうきじゅう〕…自分の全てが真理の中にあることを自覚する。
5) 方便住〔ほうべんじゅう〕…自分の善行を自分のためにせず人々のために生かそうとする。
6) 正心住〔しょうしんじゅう〕…毀誉褒貶〔きよほうへん〕に動かされない。
7) 不退住〔ふたいじゅう〕…後退しない。
8) 童真住〔どうしんじゅう〕…子どものような純粋な気持ちを持つ。
9) 法王子住〔ほうおうじじゅう〕…優れた智慧によって、将来法王になるような高邁な精神を持つ。
10) 灌頂住〔かんぢょうじゅう〕…王位につき得るくらいの勝徳を備える。
vi. <十行>とは、十の<行(行動、行為、実践)>のことである。(主に実践の部分)
vii. <十廻向>とは、十の<廻向(めぐらす)>のことである。自分に向ければ大いに得になり利益になるようなことを、他に廻すということ。
viii. 唯識の修行の一番根本は、「人間の認識のしくみ」、「存在の空無性」、「深層に潜在する利己性」などへの省察と自覚を深めていくことである。=<唯識観>=<解〔げ〕>
ix. <資糧位>は、<智慧行>と<福徳行>に分類される。
1) 「智目行足」とは、行動の方向は<智慧>によって導かれ、<智慧>は<行>によってのみ現実化し具体化するものであるということ。
2) <福徳行>とは、人をいたわり、許し、助ける修行のことである。
(a) <布施>…与えること。
(b) <精進>…<こころ>を込めて前進すること。
(c) <禅定>…ゆったりとした<こころ>の定まりのこと。
3) <智慧行>は、福徳行をするために見定める修行である。
x. <資糧位>を支える力のことを、<四勝力〔ししょうりき〕>という。
1) <因力〔いんりき〕>…自分の力のこと。
2) <善友力〔ぜんうりき〕>…真理への志が同じで、ただそれだけで結ばれている善友の力のこと。
3) <作意力〔さいりき〕>…自分の力を出し切ろうと思い立つこと。
4) <資糧力>…身体・言葉・こころの三業すべての善き行為のこと。
xi. <四勝力>によって存在や認識の省察を深め、2つの濁乱<煩悩障><所知障>が消えていく。
1) <煩悩障>…情的な迷乱
2) <所知障>…知的な迷乱

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